„Herrlichen Tagen(reprise)”
蝋燭が照らす部屋の中で、勇ましい皇帝を演じてみせたヴィルヘルムに
オイレンブルクの幻がそっと近づき、抱きしめる。
しばらくして蝋燭の灯りがそっと消える。
(„Die Lampen gehen aus”)
②曲目リスト解説と元ネタ
シーン1
“Ein verhasster Mann”
「ある忌み嫌われた男」
プロローグは皇帝の亡命先ドールンから始まります。
シーン2
“Der neue junge Kaiser für uns”
「我々のための若き新帝」
シーン変わって、
ポツダム新宮殿での華やかで希望に満ちたアンサンブルの歌です。
イメージとしてはFriedrichのDer große Königとか
モーツァルト!のWas für ein Kindとか……。
“Seine Majestät bevorzugt Uniformen”
「陛下は制服がお好き」
ヴィルヘルム2世の軍服偏愛を皮肉った曲です。
パレード礼装に身を包んだ騎兵が一列で踊るところ、圧巻でしたよね。
イメージとしてはルドルフのEin hübscher Krieg。
女性が着飾って男を落とすわ!という曲ですが、テンション的にこんな感じかなと。
シーン3
“Blut und Eisen”
「血と鉄」
これは特にイメージ的な元ネタはないかな……?
強いて言えばFriedrichのDas Preußische Prinzipとかが近いかもしれません。
シーン4
“Nicht wie die anderen”
「他とは違う」
これはもうミュージカ
ルルドルフのSo viel mehrがそのままイメージ元です!!!
皆さんもSo viel mehrをヴィリーと
オイレンブルクだと思って聴いてみてください。
シーン5
“Wir zusammen”
「私たちならできる」
要職に任命、二人で理想の帝国を作ろう―とはしゃぎまわる。
プロデューサーズの独語圏公演ではWe can do itがWir zusammenになっているので、
本当にそのままです。
シーン6
”Er ist eine Katastrophe”
「彼は災厄だ」
皇帝が帝国を破壊しようとしている!というニュアンスです。
シーン7
“Wo bleibt Bismarck?”
これは
モーツァルト!のWo bleibt Mozart?がそのまま元ネタです。
コロレドと
モーツァルトの掛け合い、年齢は逆ですがそのままヴィルヘルム2世と
ビスマルクの掛け合いで脳内変換していました。
シーン8
“Ich bin Bülow,Ihr Bismarck”
ビューローが高らかに自己紹介ソングを歌いあげます。
イメージとしては
井上芳雄版の「人生は夢だらけ」とか、
声質の感じだとI am from AustriaのNix is fixとか……。
実在のミュージカル俳優ならルカス・ペルマンに絶対ビューロー演じてほしいと思い続けています。
シーン9
„Meine Treue heißt Liebe“
「我が忠誠は愛」
皇帝への愛を吐露するバラードです。
ミュージカル曲での元ネタはなくて、Ayase「シネマ」とかぬゆり「ロウワー」とか、淡々とした歌い出しからのサビでの感情の発露みたいなそういう曲だといいなと思っています。
シーン10
“Herrlichen Tagen”
「輝かしい日々」
ビューローを得て自分の権力が盤石になった皇帝、絶好調!という歌です。
シーン11
“Ist Kaiser geistig normal?”
「皇帝の精神は正常か?」
外務省の役人たちみんなで皇帝の正気をいぶかしむシーン。
シーン12
“Die neue Zeit ist da”
「新時代がそこに」
ルドルフのDer Weg in die Zukunftだとちょっと明るすぎるかな?と思いつつ、そんな感じのイメージです。
“Herrlichen Tagen(reprise)”
「輝かしい日々(reprise)」
ポジティブな内容しか歌わない皇帝とビューロー、自分のソロ曲のワンフレーズを投げかける
オイレンブルク、「輝かしい日々」に疑問を呈す
ホルシュタイン。
第二幕
シーン13
“Unsere Zukunft auf dem Wasser”
二幕一発目、ここで有名なフレーズを回収。ティルピッツが出てきて皇帝、ビューローと一緒に歌います。
FriedrichのUns're Zeitとかがイメージに近いかな……?
船のセットが低予算ミュージカルなのに頑張っていてすごかったですね。(このシーン以外は基本的に背景をスクリーンへの投影で済ませていたので)
シーン14
“Wer kann ihn schützen?”
「誰が彼を守るの?」
やっと女声のソロが来た!!皇后アウグステ・ヴィクトリアの夫を思って歌う静かな、そして力に満ちたバラードです。
レディ・ベスの「大人になるまでに」をもうちょっと暗くした感じ……?
ザンクトガレン版のWer schützt das Kind?とかかなりそのままかもしれないです。
リアリティを考えればもうちょっと女声曲がないとおかしいというのは理解しているんですが、ヴィルヘルム二世で物語を作るとこれが精いっぱいだった……。娼婦との遊びシーンとかミュージカルだとよくありそうなんですけどね……そこまで丁寧に辿るとWW1開戦まで行けない気がしてカットしてしまいました……
シーン15
“Mein Land muss mir folgen”
「我が国は私に従う」
部分的にはルドルフのDu willst nicht hören(フランツヨーゼフとルドルフの口論)のイメージ、そこから先は
エリザベートのNervenklinikの最後の絶叫に近い感じの……。
シーン16
“Ihr Ziel ist mein Ziel”
「貴方の目的は私の目的」
皇帝をこのままにしといたらヤバイと悟った二人のデュエットです。
ホルシュタインの感情に重点持って描かれているの、このミュージカルのいいところですよね。
これはまだ明確に「この曲っぽい!」というイメージ元を見つけられておらず……
男2人が共謀という点ではレディ・ベスの「ベスを消せ」なのですが、あそこまでアグレッシブなイメージではないんですよね。
シーン17
“Ich kenne ihn so gut”
「私は彼をよく知っている」
オイレンブルクと皇后アウグステ・ヴィクトリアがお互いに皇帝への愛を吐露します。
これは明確に元ネタがあり、ミュージカルCHESSのI know him so wellです。
亡命した
ソ連のチェスプレイヤーの現恋人と国に置いて行かれた元配偶者のデュエット。
シーン18
„Wie mein Sohn“
「我が息子のように」
モ
ロッコ危機からのアルへシラス会議でトチった
ホルシュタイン、外務省での発言力がガタ落ちになります。ビューローにも助けてもらえず、なぜ私を裏切った!という怒りと寂しさに満ちた楽曲になっております。
エリザベートのIst das nun mein Lohn?あたりをイメージしています。
でもルドルフのDu bleibst bei mirくらい情念に満ちていてもいいし、ちょっとコミカルに
プロデューサーズのbetrayedぐらいブッ飛んでても楽しいな……。
シーン19
„Intrige“
「陰謀」
みんな大好き謀略シーンです。
これはそのままFriedrichのHof und Intrigeをイメージしていました。
シーン20
Eulenburg Affäre
エリザベートでルキーニに刺された後の不協和音が流れてる感じで……。
シーン21
“Ich kann nicht mehr”
「もう無理だ」
デイリー
テレグラフ事件後、ビューローと皇帝の決別。
私は貴方に尽くした、これ以上は何もできません。と言って去る帝国宰相ビューロー。
これもまだそれっぽいミュージカル曲を見つけられていません。
シーン22
„Alle haben mich im Stich gelassen“
「皆が私を見捨てた」
コルフ島で趣味にふけりながら恨み言を吐き出す皇帝。
エリザベートと同じくコルフ島でプライベートな楽しみに耽溺していたというのがいいですよね。2人の性格は真逆なのに……。
↑という歴史的事実もあって、
エリザベートのNichts,nichts,gar nichtsをイメージしています。
プロデューサーズのThe king of broadwayぐらいはっちゃけてても楽しい気はします。
シーン23
“Der schöne Sommer kommt”
「美しい夏が来た」
絶望の前には綺麗な書割を置いておきたいので、アンサンブルによる1914年の初夏ソングです。これもFriedrichのDer große Königがイメージに近い。
“Mobilisierung!”
「動員!」
戦争が始まります。まだイメージに近い曲は見つけられていないです……。
シーン24
“Herrlichen Tagen(reprise)”
「輝かしい日々(reprise)」
ついにフィナーレです。権威を傷つけられガタガタになっていた皇帝、戦争が始まることで輝きを取り戻します。最悪な形で一時的な「英雄」になってしまいました。
元々は臣下やアンサンブルとの曲でしたが、ここではたった一人で歌います。
„Die Lampen gehen aus”
「灯りが消えてゆく」
オイレンブルクは自分の領地リーベンベルクへ籠っているはずなので、本人がここにいるはずはありません。
曲名というかシーンの発想元は有名な
エドワード・グレイの発言です。
曲自体はこれもまだイメージに近い既存の曲が見つけられていないですね……。
③人名等の元ネタ
脚本はアドルフ・ヴィルブラント(世界で初めてハッピーエンドのゲイ小説を書いた19世紀末ドイツの作家)だったり作曲は
オイレンブルクの楽曲を歌っている実在女性歌手だったり、スタッフについてはいろんなところからヴィルヘルム期帝政ドイツに関わりのある人の名前を借りています。
俳優の名前はメインどころについては既存の映画やドラマでヴィリーたちを演じたことのある俳優の名前を借りています。
(ヴィルヘルム二世のBarry Fosterは
BBCのFall of
eaglesでヴィルヘルム二世を演じていた英国の俳優。)
アンサンブルについては帝政ドイツ研究者のお名前を借りていたり……勝手にすみません……。
巻末の広告も自分で撮った写真で作ったので、くすりと笑っていただけたら嬉しいです。
ここまで読んでくださった方がいらっしゃったら、ありがとうございました!