先日、お盆休みを利用してボスニアとドイツへ旅行してきました。
この機会に、折から気になっていたオイレンブルク事件の裁判記録を
閲覧できないだろうか?と思い、
その史料が保存されている
Geheimes Staatsarchiv Preussischer Kulturbesitz(プロイセン枢密公文書館)
Geheimes Staatsarchiv Preußischer Kulturbesitz | Startseite
に行ってまいりました。
私自身は研究者でもなんでもなく、
まして院も修了していないただの学部卒(史学科ですらない)のオタクなので
「本当に海外の公文書館を利用できるんだろうか……」と
半信半疑でしたが、
結論から言うと目当ての史料を閲覧し、複写もしてこれました。
以下、当日までのプロセスと当日の動向を書いておきたいと思います。
①ホームページから史料の閲覧予約をする
上のページで、日本からでも史料の予約ができます。
訪問日と滞在期間を入れる項目があって、
同時に史料閲覧室の席予約もできる仕様です。
研究テーマは私の場合とりあえず
「皇帝ヴィルヘルム2世の親政、特にオイレンブルク侯爵との関係について」
みたいな感じで書きました。
見たい史料の番号もDomeierの”Der Eulenburg-Skandal”のおかげで
具体的にわかっていたので、それを書いて送信。
Der Eulenburg-Skandal: Eine politische Kulturgeschichte des Kaiserreichs
- 作者: Norman Domeier
- 出版社/メーカー: Campus Verlag Gmbh
- 発売日: 2010/11
- メディア: Perfect
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ネットで史料請求してから閲覧の予定日まで、
最低2週間の猶予が必要なので、
旅行にあわせて文書館に行こう!という方は
お早めに請求されるのが吉ですね。
②返事が来る
予約のフォームから要項を送信したのが7月30日、
予約確定の返信が来たのが8月2日でした。
こんな感じのPDFで返事が来ます。
公文書館までのアクセス方法まで書いてくれてすごく親切。
私の場合、
始めからどの史料が閲覧したいか番号まではっきりしていたので
フォームから申請→それに対しての返信、という
単純なやり取りで済みましたが、
そこまで判ってない場合は職員さんとメールで色々やり取りしないと
いけないんじゃないかな?と思います。
③当日、公文書館へ
宿をハッケシャーマルクト近くに取っていたので
SバーンでHackerscher MarktからZoologischer Gartenへ、
そこからU9に乗り換えて、さらにSpichernstr.駅でU3に乗り換え。
しばらく走ってDahlem-Dorf駅に到着しました。
駅を出て通りを一直線に進むと右手に公文書館があります。
たのも~!
インターホンを鳴らすと扉を開けてくれる仕様ですので、
Pforte(守衛)と書かれた方のボタンを押します。
(私は最初間違えてVerwaltungと書かれたほうを押して、
反応がなかったので焦りました。)
守衛さんがロッカーの鍵を渡してくれますので、
守衛室奥のロッカールームに入って荷物を預けます。
貴重品、身分証明書、筆記具あたりを手にもって、いざ尋常に史料閲覧。
④受付で利用者登録
「受付」というコーナーが見当たらなかったので
しばらく彷徨ってしまったのですが、
受付は階段上がってド真ん中にあるForschungssaalの扉を開けて、
その左手奥のカウンターです。
(今公式サイトよくよく読んだらちゃんと書いてあった)
ネットで閲覧予約した旨を伝えると、
1枚の申請書を埋めるように渡されました。
既に史料閲覧中の皆さんの机にまじって緊張しつつ書類に記入。
(最初遠慮してカウンターの隅っこで書こうとしてたら
あっちに座って書いていいよと言われた)
項目は住所、研究テーマ、今までに論文を発表したことがあるか、
とかそんな感じ。
そこらへんはスッと埋められたのですが、
「この課題を与えた人」みたいな項目があって、
こんなもんただのオタクは書けないじゃん……(絶望)と思って
空欄のまま提出したのですが、特に何も言われなかったです。
その提出が終わると、こういう利用者カードが貰えます。
わーい!
⑤資料室で閲覧
私の見たい史料はマイクロフィルムの形態だったので、
マイクロフィルム閲覧用の部屋であるForschungssaal IIに
受付の職員さんが案内してくださいました。
その部屋で私があらかじめ予約しておいたフィルムを受け取り……
ついに閲覧!
20世紀初頭だし公的な記録だから全部活字だろうと高をくくっていたら
わりと手書きの部分が多く、
よ、読めない……ということもありましたが、
読める部分を夢中で閲覧・出力していたら
いつの間にかお昼の12時を過ぎていました。
⑥複写(印刷)
複写(表示された画面をその場でプリンターで出力)に関しては、
特に追加での申請書は要求されなかったです。
プリンターの電源を入れて、紙をセットして、
普通のマイクロフィルムリーダーの作法に乗っ取ってボタン押すだけ。
ただ、出力できるのはA4サイズだけでした。
言えばA3の紙も用意してもらえたのかもしれない。
⑦待合室について
フィルムを返却して、1階にあるKasseで複写料金(A41枚30セント)を
支払おうとしたところ……
Kasseは12時から13時までお昼休憩!(その時点で12:15だった)
仕方ないので2階の階段上がってすぐ右手前にある待合室で過ごすことに。
小さな部屋ですが、テーブルが3つほど置いてあって、
飲み物と軽いスナック・お菓子の自動販売機もあります。
その中だけは飲食OKなので、
サンドイッチ持ち込んで食べてる人もいました。
ペットボトルのアプフェルショーレを買って開けたら
中身が噴出すなどのアクシデントもありつつ、
(ドイツの自動販売機、結構高い位置から
ペットボトルを落とす構造になってません?)
よくわからないサラミのスナックを食べて小腹を満たす。
そうこうしている間に13時になったので、再びKasseの部屋へ。
⑧複写料金の支払い
なんだか公文書館の職員らしからぬ軽いノリのお兄さん
(とその横で一緒に喋っているお姉さん)に
43枚分の複写料金の支払いをお願いしました。
あんまりこんな風に複写する人はいないのか、
「すごく多いね~」という感じで一枚一枚数えて、
領収書も作ってくださいました。
最後にロッカーの荷物を取りに行き、
鍵を守衛さんに返して終わりです。
⑨最後に
総じて言えることなのですが、
本当に皆さん親切です。
普通こんな公文書館に来る人なんて、大体マイクロフィルムの扱いに慣れた
研究者の方ばかりだと思うのですが
「フィルムの使い方はわかりますか?」と聞いてくださったり……。
(私はさすがに異国で初めてMFを使うのは怖かったので、
大阪市立図書館で練習していきました)
それに加えて、私はドイツ語がそんなに話せないのですが、
すぐに英語に切り替えるでもなく、
あくまでドイツ語で丁寧に対応してくださったのがすごく嬉しかったです。
今回、アーカイブ訪問に当たって
参考にさせていただいたのが以下2つの記事です。
妹尾哲志先生による「ドイツ外務省政治史料館の紹介」
History of Eutopean Integration-史料館案内
川嶋周一先生による「ドイツ外務省史料館利用感想」
ドイツ外務省史料館の紹介ですが、
ドイツのいずれかのアーカイブを初めて訪問予定だ、という方は、
読むことで不安を軽減できると思います。
また、今回の訪問にあたり、ツイッターで
ビスマルク研究者である飯田洋介先生から
(飯田先生の新書『ビスマルク』 は
初学者にも先行研究をわかりやすく整理し、
ビスマルクの業績を改めて解説してくれる
素晴らしい本なのでここでオススメさせてください)
研究者の方は当然知っているし、院生の方はしかるべき指導者の方から
アーカイブの使い方については教えてもらうんじゃないかと思うので、
素人の私がこんな記事を書いてどうなる……とも思うのですが、
もしドイツ語がちょっとできて、どうしても必要な史料があって、
訪独する機会を得た!という歴史ファンの力になれたら、
これ以上の喜びはありません。
以上、Geheimes Staatsarchiv PKの利用レポートでした。